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更新日:2019.10.16

SSSの雇用創出で経済的自立
困窮男性が手に入れた「ふつうの生活」

当事者インタビュー:Fさん(男性・38歳)

#神奈川 #30代 #雇用創出 #就労支援

「ふつうの生活」のイメージ

突然ですが、みなさんにとって「ふつうの生活」とはどんなものですか?
帰る家があって、食事ができて・・・社会人の方であれば仕事、学生の方であれば勉強と、こうした日常を送ることがいわゆる「ふつうの生活」のひとつのイメージなのではないでしょうか。

しかし、生活困窮に陥った人の支援をしていると、一般的にイメージされる「ふつうの生活」とかけ離れた生活をしてきた人が少なくありません。

今回のコラムでは生活困窮状態からSSSによる雇用創出によって経済的な自立を果たした男性をインタビュー。ご本人が「ふつうの生活」を手に入れるまでのお話です。

ホームヘルパーとして働く

――ザバ~ン!ザザザ~!!
大浴場の中からお湯を流す音が聞こえてきます。
「ずいぶん、洗えるようになったねぇ!前とは動きがぜんぜん違うよ~」
「背中を洗うのは手伝おうね」
入浴介助をしながらこう声をかけているのは、Fさん(男性・38歳)。
単独での居宅生活が困難な人の生活支援をおこなう施設『ハッピーホーム宿河原(川崎市内・無料低額宿泊所)』に訪問介護でやってくるホームヘルパーのひとりです。

Fさんはケアマネージャーのプランに基づき要介護者の入浴介助や爪切りなどを担当。洗濯や掃除などの家事援助のほか買物や散歩の同行もおこないます。

そして、実をいうとFさん自身も生活困窮に陥り、かつて生活保護を受給していた経験の持ち主。まずは、Fさんがこれまでにどのような人生を送ってきたのかを振り返ります。

転職を繰り返して生活困窮

山陽地方の高校を中退後、地元で飲食業やパチンコ店のホールスタッフとして働いたFさん。20代後半で上京し、JRの下請け工事や知り合いのツテをたどって歓楽街でボーイなどをしてきました。

どの仕事でもそれなりにこなしてきたFさんでしたが、いずれも上司とモメて退職に至ることが多く、30代の前半からは日雇いで土木作業に従事する生活を送るようになりました。

「体がキツイのに日当が安い」「色んな仕事を経験して酸いも甘いも知った」と話すFさん。稼ぎがよく金銭的に恵まれていた時期とは対照的に気がつけば定住先を持たない生活困窮状態に陥っていました。

SSSの雇用創出により経済的に自立

不安定な仕事に居場所。心身ともに疲弊していったFさんは、「日雇いから抜け出し、アパートで暮らしたい。ふつうの生活をしたい」と思うようになり、行政の福祉課へ相談。生活保護を申請。SSSの運営する無料低額宿泊所の利用を開始しました。

その後、自立を目指す中で施設職員のすすめもあり、生活保護制度の「生業扶助」を活用してホームヘルパー(介護職員初任者研修)を取得。時を同じくしてSSSが雇用創出を目指して新たに立ち上げた介護事業所『S-LIFE(エスライフ)』※で働くようになり、生活保護を脱却して経済的な自立を果たしました。

当初は「資格がないよりあった方がいい」というくらいの軽い気持ちで介護の世界に足を踏み入れたFさんでしたが、いまとなっては「毎日発見がある」とホームヘルパーの仕事に楽しさとやりがいを感じています。

※『S-LIFE(エスライフ)』は、NPO法人エスエスエスから内部ベンチャーとして誕生した雇用創出企業「ソーシャルビジネスサポート 株式会社(略称:SBS)」が運営する介護事業所です。

支援される側から支援する側へ

Fさんが訪問介護に入っているハッピーホーム宿河原は、行き場を失った低所得高齢者の生活の場。
そこには要介護認定をうけたものの、受け入れ先さがしが難航する方や要介護申請を手続き中の方が暮らしています。

かつて支援される側だったFさんは、「手続きには何かと時間がかかる」「生活保護受給者の行き先はなかなか見つからない」と話し、自分が担当する利用者の置かれている現状を十分に理解したうえで介助にあたっています。

そして、Fさんのこうした姿勢は相手にも通じるのでしょう。
冒頭の入浴場面のつづきでは、介助を受ける高齢男性から「そこにいるっていう安心感がちがうよね。何かあったらすぐ言えるしさ」といったFさんへの信頼を示す言葉が聞こえてきました。

「ふつうの生活」をかなえる

S-LIFEでの介護の仕事をスタートして約1年が経過。地域のアパートでひとり暮らしを実現したFさんは、「生活保護を申請した時に思い描いた『ふつうの生活』をかなえることができた」と話します。

「毎日、翌日の仕事に備えて夜8時か9時には寝る」
「生活保護を受ける前や生活保護を受けている時より、いまの方が生活水準が上がっている」
Fさんは必要以上に「ぜいたくな生活」を望んでおらず、「自分の好きなものが食べれるし、好きなものが買える」「いまの生活がちょうどいい」と、介護の仕事をベースとした「ふつうの生活」を気に入っています。

そして、将来について尋ねると「体にガタがきたら(現在の介護の仕事を)できなくなるかもしれない」「訪問介護実務者やケアマネージャーなど、より上位の資格を取得したい」と真剣な面持ちで語ってくれました。

あなたは、自分の望む「ふつうの生活」を送ることができていますか?
そして、まわりに雇用創出による就労支援を必要とする人はいませんか?

文(聞き手):竹浦史展
取材日:2019.8.28

ハッピーホーム宿河原

神奈川県川崎市内・無料低額宿泊所・定員34名

[お問い合わせ]
NPO法人エスエスエス 神奈川支部
0120-776-799

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