NPO法人エスエスエス(SSS)では2015年4月より「自立援助ホーム」を千葉県内にオープンし、主に10代の青少年を対象とした自立支援を始めました。
自立援助ホームは、両親の離別や死別、虐待など様々な事情により、家庭で生活できない青少年が、働くことを前提として生活を共にし、自立を目指す児童福祉法上の施設です。
同じく児童福祉の分野の児童養護施設が乳児から対象なのに対し、自立援助ホームは義務教育を終えた15歳以上が対象。
(2017年度より年齢制限が緩和され、原則20歳まで、就学中に限り22歳の年度末まで入所可能になった点は両施設とも共通)
そして、2017年7月、SSSでは2番目となる自立援助ホームを埼玉県内にオープン。今回はスタッフインタビューというより、自立援助ホームを通じた10代の支援について、児童指導員をつとめるスタッフ・佐藤隆志に話を聞きました。
2018年4月の入学シーズン。
「学校で友達ができた!」「すごく楽しい!」
受験に合格を果たしたA君は自立援助ホーム(以下、ホーム)に帰宅後、佐藤らスタッフに笑顔で報告してきました。
以前のA君は朝も起きられない状態でしたが、毎日通学するようになってからというもの6:30にはホームを後にするようになったといいます。
A君を含めホームで暮らすのは、10代の男の子、合計6人。
子供達は、親からの虐待を受けたり、逆に家庭内暴力などの問題を起こしたり、自殺未遂をするなどして児童相談所に保護され、ホームにつながってきました。
たとえば、B君は、小さい頃から母親に虐待されており、高校生になってからようやく「自分の家庭のおかしさ」に気づいたと言います。
長年に渡り、B君の母親は服で隠れるようなところだけを殴り、
「お前なんか生まれてこなければ良かった」と精神的虐待も続けていました。
高校に入学してからB君はついに耐えられなくなり担任に相談。
「もし自分が我慢して言わないでいたら、誰にも(虐待を)知られなかった」
この言葉を聞いた佐藤は、
「自分から発信することができず、我慢している子供が世の中にたくさんいる」と感じるようになりました。
こうした子供達の支援は、住民票の手続きをはじめ、必要な場合には通院同行や障害者手帳の取得というように、SSSがこれまでにしてきた生活困窮者、つまり大人に対する支援とほとんど変わりありません。
大きく異なるのは、ホームのスタッフが子供達の親がわりを務めるということ。
特に高校生であれば授業参観や三者面談などの場面があり、
「一人で行く方がつらい」「一緒にきてくれたら安心」という子供の声にこたえてスタッフが出席します。
また、仕事をすることが前提となる自立援助ホームでは、就労支援も大切。
仕事探しや面接の練習はもちろん、仕事をスタートした後のフォローも欠かすことができません。
子供達の主な仕事先は、小売業や飲食業のアルバイトになりますが、
「店長がイヤ」「仕事がだるい」「怒られた」「カワイイ子がいない」といった
ささいな理由で仕事を辞めてしまう子供もおり、佐藤らはその都度、子供達に質問を投げかけます。
「なんで辞めちゃったの?」
「それで、自分はどう思ってるの?」
「次も同じようなことがないようにするためには、どうしたらいいと思う?」
このように、佐藤らホームのスタッフは、「仕事をすることがどういうことなのか」を子供達自身に考えてもらい、気づいてもらえるよう支援のスタンスを統一しています。
なぜ、オープンして間もない(取材の時点で開設から10か月)ホームのスタッフが支援の足なみをそろえることができているのでしょうか?
不思議に思う人もいるかもしれませんが、その理由は2つあります。
まず1つ目は、SSSがこれまで培ってきた大人に対する自立支援が、青少年に対する支援にも通じる部分が多いこと。多種多様な分野にまたがる困難ケースを「わたし達は、まず助けます」というミッションのもと、スピーディーに対応してきた経験が生きているのです。
そして、2つ目は、ホーム長がかつて里親制度を経験した当事者であることです。ホーム長は自らの経験をもとに「もし、自分だったら何が嫌か」「子供の立場だったらどうして欲しいか」をスタッフと共有。帰宅時や食事の時間を通して子供達の変化をキャッチし、「なんかあった?どうしたの?」と「話しを聞く」「サインに反応する」といった基本的なことを大切にしています。
現在、SSSの運営するホームは埼玉県内の児童相談所をはじめ関係機関に認知され、他の先輩ホームのみなさんにも多くのことを教えていただきながら運営することができています。
2018年4月現在、自立援助ホームは埼玉県全体でも8か所、合計の定員は48人にすぎません。
しかしながら、厳しい環境におかれている青少年を対象とした「自立援助ホーム」という選択肢があることをより多くの人が知ることは、救われる子供達がふえ、彼ら彼女らの自立の道につながるのではないでしょうか?
文(聞き手):竹浦史展
取材日:2018.04.20
1981年7月生まれ/2009年入社
自立援助ホーム 児童指導員
幼少期に遊具から転落した経験があり、両親より「人のためになる仕事を」と言われてきたことからSSSに入社。趣味は昨年からはじめた登山。
※自立援助ホームの所在地、電話番号は公開しておりません。
詳しくは埼玉支部までお問い合わせください。
[お問い合わせ]
NPO法人エスエスエス 埼玉支部
0120-862-767